Thursday, November 6, 2008

Obama and the Global Future

田中ニュース: オバマと今後の米国

民主党のオバマが大方の予想通り次期大統領に決まった。そんなオバマ当選の当日に発表された田中ニュース。世の中のお祭り騒ぎに踊らされず、非常に健全な感覚を持った分析だと思う。現時点でこの分析を出すというのは勇気がいることだったと思う。

とはいえ、一部いきすぎだと思わないところもないでもない。変革を訴えるオバマがロバート・ゲーツを再任することはやはり考えづらい(様々なところでうわさはされてはいるが・・・)。オバマは少なくとも民主党の政権の基盤を整えるためにも、過去の勢力をワシントンから一掃するのではないか。
また、多分次の記事あたりで触れるつもりであえて書かなかったのだと思うが、実のところ目下の重大懸案はロシアではなく、イスラエルの方なのではないかと思えてくる。

日本についての分析については筆者の意見に強く賛同する。
マスコミの報道は、いまだ大本営発表一辺倒であり、(少なくともマスメディアでは)健全なジャーナリズムが機能していない。多極化する世界の中での日本の戦略をあえて描こうとしない日本政府をどうして批判しようとしないのか。どのニュースを読んでも、日米同盟の堅持だの、拉致はどうなるだの、そんな話ばかり。今本当に大切なのはそんなことではない。重要なのは今が世界の体制の大転換期にあるという事実だ。

今最も考えるべきことは、多極化に向かう世界の中での日本の立ち位置だろう。少なくとも拉致ではない(もちろん拉致も重要な懸案であることを否定するつもりはないが)。多極化する世界の中で日本はどういった立場をとっていくつもりなのか、明確なビジョンは全く見えてこない。
日本だけが一人立ちの勇気もなくアメリカの傘に居続ける姿勢を崩していない。オバマが宣言する通り、アメリカは確実に「CHANGE」する。超大国として「CHANGE」するのではなく、その責務から開放されることによって生まれ変わろうとしている。(既に現ブッシュ政権からその布石は打たれ始めているのだが)
アメリカは背負い続けてきた荷物を捨てたがっている。(すでにヨーロッパの荷物=英やNATOは捨てた。)
既にアジアには今後極となりうる大国が存在しており、アメリカがそうした国々の宗主国である目的をすでに失っている。必要と感じているのは日本のみだ。
日本は、世界中からアメリカ一辺倒から一人立ちすることを望まれている。少なくとも今の中国はアジアの単独覇権国となるにはまだまだ不安定であり、アジアは中国以外にも極となりうる安定した存在を欲している。そして日本はその役を引き受けるべき立場にある。(IMFの通貨の多極化戦略においても円は米ドル、ユーロ、人民元、GCC(湾岸統合通貨)に並ぶ軸として考えられている)
日本が改めて世界から信頼される国になるためには、世界から望まれる立場を引き受けることが必要だ。もしこの責任を果たさないのなら、日本は確実に今後の多極化世界において見捨てられた存在になる。

日米同盟中心主義を崩さない麻生に比べ、少なくとも、民主党の小沢はこの点を充分に認識し、日米同盟堅持としながらも、外交政策では国際社会における日本の役割を独立させたものにすることを中心に据えている。その点で国連待機部隊を創設しようとする意図は充分に理解できる。民主党には政権を担うにあたり多々足りない部分があるが、この重大な問題の認識という点においてははるかに健全であるように思える。

Saturday, November 1, 2008

Will International Crisis Occur?

Powell Warns of Crisis "We Don't Even Know About Right Now"

先日バイデンが発していた言葉をオバマ支持のパウエルも繰り返した。「来年オバマが大統領に就任した直後、何らかの国際的な危機が起こる。そしてオバマはこの最初の試練を乗り越えなくてはならない。何らかの国民の反発を招きうる政策をとることを決断せねばならないかもしれない。」というのだ。

ここでいう「国際危機」とは経済危機のことではない。政治危機のことを指していると考えられる。バイデンもパウエルも何が起こるか、明言は避けているが、何らかの政治危機、戦争が起こることを予感させている。

来年頭の政治危機として想定しうるものを考えてみると、真っ先に浮かぶのがイスラエルと中東の戦争である。

イスラエルは、先日の米国大統領選に関する調査で圧倒的多数がマケイン支持であった。
マケインは、イスラエルと大きなパイプを持ち、イスラエル寄り姿勢を示している。もし大統領となったならば今後もイスラエルと中東に対する影響力を行使し続けてくれると考えているためだ。
一方のオバマは、イスラエルとは距離を置く姿勢をとっている。親イスラエルであるヒラリー支持者がオバマ支持への鞍替えに対して困惑する点の一つはここにもある。

イスラエルとの関係まで「CHANGE」しようとしているオバマが大統領になれば、イスラエルは現在行使しているアメリカにおける権力を大きく失うことになる。(アメリカは政権が変わると、官僚機構の内部の重要な人事の総入れ替えが起こる。ワシントンD.C.の雰囲気が変わるとすら言われる。)

しかも後ろ盾がなくなるイスラエルはオルメルト首相の任期が切れ、来年2月前後に総選挙を迎えることになる。アメリカの後ろ盾を失うことが濃厚なイスラエルの世論は割れており、和平に積極的な中道与党のカディマのリブニと、反パレスチナの右派リクードのネタニヤフが戦うことになる。以前であれば、アメリカが眼を光らせており、こうした際に外国の介入を招くことはあまりなかったが、今度はアメリカの影響力が弱い中での選挙である。この期に乗じて中東がイスラエルに圧力を加える可能性は否定できない。

しかし、私はむしろイスラエル側からの攻撃こそ可能性が高いのではないかと思う。イスラエルにとってみれば、オバマが大統領になった時点ですでに守るものはなくなってしまうのだから。守勢に立ち続ければ中東の介入を招き、いずれ戦争になる。そうならばあえて先手をとることで、アメリカの世論を喚起させ、嫌でもアメリカに介入させようとするのではないか。

更にこの危機を扇動するであろうと思われるのが、911以降潤ってきた米の軍需産業だ。イラク戦争終結を明言しているオバマが大統領になったら、アメリカの対テロ戦争の主戦場はアフガンに絞られることになる。彼らは戦場がなければ産業が成り立たない。オバマが大統領になった時点で出鼻をくじいて新たな戦争を起こし、世論を操作しようと考えてもおかしくはない。

もし中東戦争が再び起こるとしたら、オバマはどんな決断をするのか。イスラエル滅亡を容認すれば、アメリカ内部の巨大なユダヤ人コミュニティから猛反発を食らい、まだ脆弱な段階の政権運営に極めて大きな影響を及ぼす。一方、イスラエルを擁護することになれば、シオニスト(イスラエル復興主義者)の政権内への侵入を許すことになる。いずれの決断を下すとしても、前途は極めて困難だろう。

果たして、バイデンやパウエルが言うように本当に「何らかの危機」は起こるのか。しずれにしても今度のアメリカ総選挙で世界は大きく変わる。何が起こってもおかしくはないのは確かだ。