Wednesday, September 24, 2008

Google: Wiping out the next smallpox

The Official Google Blog: Wiping out the next smallpox

Googleは設立10周年を迎え、次の10年でおこる技術革新とグローバル社会へのインパクトについての見解を公式ブログで公開している。
これまで数日はウェブ技術や広告などに関する見解が多かったが、ここ数日は、社会的なテーマについて意見を発表している。

そんな中、今日発表されたのは、「Wiping out the next smallpox」という記事。
新興・再興感染症の脅威と、この分野でのイノベーションの重要性と、Google.orgによる「予測と予防」イニシアティブの役割を述べている。

Google.orgは、Googleのフィランソロピー部門であり、営利企業の形態をとる組織である。
営利企業であるので、非営利、営利を問わず、投資を行うことができ、また利潤を追求することができる。
”Predict and Prevent(予測と予防)”イニシアティブは、新興・再興感染症などの新たに発生した国際公衆衛生学的危機(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC)に対応するための新たなイノベーションに投資を行っている。
2008年3月の新興・再興感染症に関する国際会議の場で、Google.orgのディレクター、Larry Brilliantにより詳細が語られている

そのイニシアティブの概要は次の通りである。(Google.orgより翻訳)

(1)ホットスポットを同定する

新たに出現する脅威を増幅させる複雑な因子を理解することは、社会が新たな脅威による奇襲を予期し、脆弱性を減弱させることに役立つ。Google.orgは、まず次の領域に焦点を置く。

  • 人間の保健、動物保健、環境保健の各セクターを横断的に知識を共有する
  • 脆弱性のマッピング、モデリング能力を高めるため、データの収集、共有、分析を改善する
  • 脅威に耐え、変化を受け入れるため、社会の弾力性を高めることに貢献する

(2)すばやい対応を可能にする

タイムリーで、正確で、アクセス可能な情報は、限定された健康危機を地域的、更にはグローバルな脅威へ発展することを防ぐことができる。Google.orgは次の点に焦点を置く。
  • 革新的な方法を用いることによって、脅威がどこで起ころうとも、それらをすばやくみつけることができる
  • アウトブレイクを確認し、その原因を同定する
  • 地域住民からGlobal Health当局に至るまでの鍵となるステークホルダーに警告する

(3)投資先

現在のグラント先は次の通りである。
  • InSTEDD: 500万US$、複数年。Global Healthおよび人道的な危機に対して、早期発見、準備、対応能力の改善に焦点を置くNPO。
  • Global Health and Security Initiative: 250万US$、複数年。メコン川流域(タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、中国雲南省)における国家レベル、準地域レベルにおける疾病サーベイランスシステムの強化を図るイニシアティブ。
  • Clark大学のClark Labs: 617,457US$。Gordon and Betty Moore財団と同額の出資。アフリカおよびアマゾン川流域における気候変動による生態系、食糧、健康への影響のモニタリング、分析、予測を改善するシステムの開発を行う。
  • HealthMap: 45万US$、複数年。疾病サーベイランスのオンラインデータソースの活用のための綿密な研究を行う。

Google.orgが面白いのは、通常の財団のように国際機関や現地で活動を行うNGOなどに投資を行うのではなく、イノベーションが期待される研究に対して投資を行うところだ。
ゲイツ財団、クリントン財団、ブルームバーグ財団他、Global Healthに巨額の出資を行う財団は数あれど、「イノベーション」に特化した投資を行うのは、Google.orgの他にはないように思われる。

最近のまとめ

久々の投稿。

TICAD IV、G8に向かって盛り上がっている今年の1月でBlogは中断・・・。あらら。

結局、TICAD IV、G8での日本のGlobal Health領域でのリーダーシップは、一応の評価は得た。TICADでは、日本のアフリカへのODAの倍増が約束され、G8では、G8各国のコミットメントの履行状況をモニタリングするフォローアップ・メカニズムの設置を決めたことは評価に値する。
しかし、結局終わってみると物足りなさが残った気がする。
TICADは、次回の開催の約束はなされなかった。
G8の洞爺湖行動指針には、G8がなすべきことが沢山盛り込まれている反面、それを達成するに足る新たな資金拠出はなされなかった。
また、大きな進展が期待された母子保健分野でも、一歩踏み込んだ目標設定はなされなかった。
G8に求められていること、それは政治的に最も高いレベルでのコミットメント、中でもどれだけ資金を「拠出」するか、という約束に他ならない。そういった意味で、今回の洞爺湖サミットのGlobal Health分野のコミットメントは、中途半端なものにしかみえない。

奇しくもTICAD、G8と同時期に再び深刻化した金融危機は、北米、西欧をはじめ、世界を長期の景気後退局面へ追いやる可能性を増している。食料、資源をめぐる競争も激化の一途をたどっている。オイルバブルは、短期的には一応の収束を見たが、長期的には値が低いままである理由が見当たらない。今後数年で再びオイルの値段は再上昇するだろう。
こうした新局面に、もはやG8のみで有効なコミットメントを期待するのは難しいのかもしれない。大きな問題は抱えているものの、新たに力をつけている新興国G5(中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ)を(最低限、開発分野に関しては)、中心勢力として巻き込む必要があるように思える。