Tuesday, November 27, 2007

Developing a common framework for action on Global Health

外務省政策演説「国際保健協力と日本外交 ―沖縄から洞爺湖へ―」
国際保健協力、指針づくり議題に 洞爺湖サミット(朝日新聞)
Minister says Japan to spearhead global health drive during G8 presidency(AFP)
Japanese Foreign Minister commits to global health for G8(Action for Global Health)

前回の記事で触れた通り、25日、日本の国際保健政策の全貌が発表された。
2008年は日本にとって、政策としてのGlobal Healthの転機となる年となりそうだ。

前回の内閣発表に続いて今回の演説で、重要なポイントであったのは、次の4点であると思う。

1. TICAD IV, G8で目指すのは、「国際行動指針の策定」
2. Horizontal + Vertical Approachの推進
3. 日本の経験を強調
4. 全員参加型(分野を超えた協力、ドナーを超えた協力)

予想通りの内容といえばそれまでだが、意義深いのは、2,3,4を踏めた「国際行動指針の策定を目指す」という事実そのものだろう。

簡単にまとめると、政府が言いたいことはこういうことだろうと思う。

国際社会にはすでにMDGsという大きな目標があるが、それに対する「取り組み方」として得られている共通見解はこれまでなかった。それがまさに近年、Horizontal vs Vertical Approachという構図として表れてきている。(このBlogの出発点のテーマだ。)
そしてこれを解決するため日本がたどり着いた提案は、まさに日本の経験のなかにあった。母子保健と感染症を中心にHorizontalな公衆衛生活動を軸として、Verticalなプログラムをその中に包括して行ってきた。その結果が世界最低の乳児死亡率と長寿世界一として表れている。だからこそHorizontal ApproachとVertical Approachの統合が肝要だ。
そして、世界全体の「保健」問題を解決するために、各々のドナー、中でも保健セクターのみが頑張っていても埒が明かない。すべてのStakeholderが集まって共通見解を持って取り組む必要があるだろう(より広い意味のSWApsということ?)。だから、その共通見解作りの場を日本がホストする会議で設けましょう。

また、Global Healthに関わる人間として重要なコメントとしては、「研究・開発の促進」が包括的取り組みの中で触れられた点だろうと思う。
近年、欧米ではGlobal Healthの話題が世界の主要雑誌で一斉に掲載されるなど、Global Healthへの学界の関心が急激に高まっている。The Lancetをはじめとして、主要な医学雑誌でGlobal Healthに関する良質な論文は急増しており、Evidenceの蓄積も進みつつある。しかし、残念なことに日本の学界はいまだ発展途上であり、そうしたプロセスに関わることができないでいる。日本は欧米に比べるとGlobal Healthの研究に関わる人の数が断然少なく、また研究費も少ない。また実践活動(開発援助)と研究活動とのリンクも薄い。実践的な研究を行える地盤がまだ整っているとはいいがいたい。こうした意味で、国策としてGlobal Healthの研究・開発へのテコ入れが宣言されたことの意味は非常に大きいだろうと思う。

そして、もう一つこの演説の中で私自身が気になったのは、申し訳程度に触れられていた「気候変動と健康」というテーマだ。
MDGsでは(そして開発援助の世界においても)、気候変動(MDG-7)と保健(MDG-4/5/6)は、それぞれ別問題として扱われ、その接点については無視されているが、今後極めて大きな問題となってくることは間違いない。ぜひ指針策定においても重要なテーマとして扱ってほしい。

Friday, November 23, 2007

Global Health on G8 Summit 2008

洞爺湖サミットで日本政府 「国際保健」主要議題に (MSN Sankei)
保健分野で国際協力を 母子手帳普及など指針策定呼び掛けへ(北海道新聞)

政府は11/22、来年の洞爺湖サミットで「Global Health」を主要課題として取り上げると発表した。
25日に開かれる国際シンポジウム「“PEOPLE AT THE CENTRE”:21世紀の医療と医療システムを求めて」において高村外相から政策提言として発表される。

今回の発表でのポイントは3点。

「人間の安全保障」の概念に立脚
「母子保健」「保健医療人材育成」を柱とした行動指針(特に母子手帳・保健師育成)
・ UN/GO/NGO/Private Sectorなどの「全員参加型」アプローチの枠組の提唱

日本がGobal Healthに関するInitiativeを発表するのは、1994年の人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)、1997年のBirmingham Smmitにおける国際寄生虫イニシアティブ(橋本イニシアティブ)、2000年の九州沖縄サミットにおける沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)以来4度目となる。

今回、日本が取り組む重点課題は、Woman Deliverで宣言したとおり、母子保健(Maternal, Newborn and Child Health)の分野。母子保健がSummitの主要課題になるのは実は初だ。母子保健分野は、まさに日本の戦後の公衆衛生において目覚しい成果を挙げた分野で、母子健康手帳や保健師の活動はその改善に大きく貢献した。これまでJICAなどを通し、日本は世界的にも母子手帳の普及を推進してきた。母子保健を政策の中心におくことは、MDGsで立ち遅れたMDG-4/5をテコ入れすることにつながると同時に、保健医療システムそのものの強化にもつながる。

一方、人間の安全保障(Human Security)は、1994年のUNDP Human Development Reportで初めて提唱され、現JICA理事長の緒方貞子氏がAmartya Sen氏とともに共同議長を務めた同名委員会で概念的に整備された考え方。これからの国際社会の安全保障のあり方として、国家安全保障(National Security)に加え、よりミクロ的な個々の人間の生存・生活の安全を保障しようというもの。日本やカナダなどの外交政策において主軸の1つと位置づけられている。

なお、25日のシンポのテーマは、「『人』中心の医療」="People-centred Healthcare"。
近年WHO/WPROが推進するPeople at the Centre of care Initiative (PCI)の中で提唱される考え方だ。混同しそうだが、いわゆる患者中心医療(Patient-centered Medicine)とは異なる。医療者や患者中心の医療でもなく、「人々」中心の「ヘルスケア」という考え方だ。
シンポジウムを日本語化する際に"Healthcare"を"医療"と訳さざるを得なかったのが惜しい。ヘルスケアという概念の中には、医療に加え、保健や福祉の概念も包含される。例えば、People-centred Healthcareには、健康リテラシを向上させる分かりやすい健康情報や健康教育へのアクセス、保健アクセスのdecision-makingのサポート、といった観点も含まれているからだ。

こうしたEmpowerment、Participation、Community/Family-centredといった考え方は、まさに包括的PHC(Alma-Ata宣言)への回帰であり、「人間の安全保障」の具体的処方箋ともいえると思う。
この会議を日本で開催することは、日本にとっては「人間の安全保障」へのcommitmentを内外へアピールするよい機会なのだろうと思う。

そして、その中で発表される新しいGlobal Health Initiative。よく考えてみるととてもうまくできている。

しかし、よく分からないのが、ノルウェー・英仏独加、Clinton Global Initiativeなどが推進するDeliver Nowキャンペーンとの関係性だ。Deliver Nowを統括するWHO|The Partnership for MNCH(PMNCH)の コーディネーションの元で日本のイニシアティブも推進されていくのか、それとも独自路線を歩むのか。「国連や各国政府やNGO、民間などの全員参加型の枠組 みの提唱」というが、母子保健分野には、そうした枠組がすでにある。25日のシンポでこのあたりの詳しい話が聞ければいいと思う。

Monday, November 19, 2007

Reducing the impact of climate change

IPCC 4th Assessment Report published!

世界中で異常気象が頻発し、気候変動に世界的な注目が集まる中、11月12-17日Spain, Valenciaで開催されたIPCC総会で、最新の第4次評価報告書が承認された。

今回の報告書では、3 Woking Groupsの報告に加え、書き下ろした報告として、近年の異常気象や生態系の破壊と気候変動との高い関連性を示し、今後20~30年が地球の将来の分かれ道となることを指摘した。来月Indonesia Baliで開催される気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)では、こうした知見を元に、ポスト京都議定書の枠組みを描く作業が行われることになる。

気候変動は、今後Global Health上の問題としても極めて大きなテーマとなることは間違いない。
第2作業部会報告書の中でも、気候変動が人間に与える影響の大きさについて検討され、中でもHuman Healthに対する影響について注目された。

以下、Executive Summaryを抜粋。

Climate change currently contributes to the global burden of disease and premature deaths (very high confidence).
Human beings are exposed to climate change through changing weather patterns (temperature, precipitation, sea-level rise and more frequent extreme events) and indirectly through changes in water, air and food quality and changes in ecosystems, agriculture, industry and settlements and the economy. At this early stage the effects are small but are projected to progressively increase in all countries and regions. [8.4.1]

Emerging evidence of climate change effects on human health shows that climate change has:
• altered the distribution of some infectious disease vectors (medium confidence) [8.2.8];
• altered the seasonal distribution of some allergenic pollen species (high confidence) [8.2.7];
• increased heatwave-related deaths (medium confidence) [8.2.1].

Projected trends in climate-change-related exposures of importance to human health will:
• increase malnutrition and consequent disorders, including those relating to child growth and development (high confidence) [8.2.3, 8.4.1];
• increase the number of people suffering from death, disease and injury from heatwaves, floods, storms, fires and droughts (high confidence) [8.2.2, 8.4.1];
• continue to change the range of some infectious disease vectors (high confidence) [8.2, 8.4];
• have mixed effects on malaria; in some places the geographical range will contract, elsewhere the geographical range will expand and the transmission season may be changed (very high confidence) [8.4.1.2];
• increase the burden of diarrhoeal diseases (medium confidence) [8.2, 8.4];
• increase cardio-respiratory morbidity and mortality associated with ground-level ozone (high confidence) [8.2.6, 8.4.1.4];
• increase the number of people at risk of dengue (low confidence) [8.2.8, 8.4.1];
• bring some benefits to health, including fewer deaths from cold, although it is expected that these will be outweighed by the negative effects of rising temperatures worldwide, especially in developing countries (high confidence) [8.2.1, 8.4.1].

Adaptive capacity needs to be improved everywhere; impacts of recent hurricanes and heatwaves show that even high-income countries are not well prepared to cope with extreme weather events (high confidence). [8.2.1, 8.2.2]

Adverse health impacts will be greatest in low-income countries. Those at greater risk include, in all countries, the urban poor, the elderly and children, traditional societies, subsistence farmers, and coastal populations (high confidence). [8.1.1, 8.4.2, 8.6.1.3, 8.7]

Economic development is an important component of adaptation, but on its own will not insulate the world’s population from disease and injury due to climate change (very high confidence).
Critically important will be the manner in which economic growth occurs, the distribution of the benefits of growth, and factors that directly shape the health of populations, such as education, health care, and public-health infrastructure. [8.3.2]

第2作業部会は、気候変動が人間の活動に与えるインパクト(Impact)、そしてそれらへの適応(Adaptation)、および脆弱性(Vulnerability)の評価をテーマとして調査・研究を行っている。

Impactとして、気候変動に伴い増加する健康リスクとして様々なものが挙げられており、Adaptation上の問題として、熱波やハリケーンなどの気候変動による健康被害に対する対策は先進国においても十分ではないことが指摘されている。しかし、そうした被害が最も大きくなるのは、途上国においてである。Vulnerable groupsとして、都市部の貧困層、高齢者と子ども、伝統的社会、零細農家、そして海岸部人口が挙げられている。
そして何より重要なのは最後の点である。
経済開発はAdaptationの重要な要素にはなるが、それ自身が世界の人々を気候変動による健康被害から守るわけではない。極めて重要なのは、経済開発がいかに行われるかということ、つまり、成長の利益の配分をいかに行うか、そして教育、ヘルスケア、公衆衛生インフラといった人々の健康をダイレクトに形成する要素をいかに充実させるかということだろう。

Reducing the impact of climate change (Brown H. Bull World Health Organ. 2007;85:821-900)

来年5月に発表されるWorld Health Report 2008のテーマは「気候変動と健康」となった。
気候変動リスクに対応するため、保健医療システムの強化をいかに行うかが主なテーマとなる。
またWHOは、12月のBali会議で、気候変動から健康を守る世界的な枠組み(Global Framework on Protecting Health from Climate Change)について発表する予定だ。

IPCCの報告で、気候変動が健康に与える影響の大きさは想像以上に大きいであろう事が分かってきた。気候変動は、H5N1、Health-related MDGsといったテーマに匹敵する、あるいはそれを超えうる公衆衛生上の大きな挑戦となるかもしれない。

さて、日本に眼を向けてみよう。
日本はこれまで、気候変動については、京都議定書をはじめ国際社会においてリーダーシップを発揮してきた。環境問題は、産業界も一体となりinnovationが続いており、もはや日本にとって得意分野の一つともいえる。当然、来年の洞爺湖サミットにおいても環境は最重要課題と位置づけられている。

一方で、先日、政府はWoman Deliver Conferenceで、日本はGlobal Healthにおいてもリーダーシップを発揮する、TICAD IV・洞爺湖サミットの主要課題とすると宣言している。

気候変動と健康-いまだ世界の対策が遅れているこのテーマは、実は日本にとってはリーダーシップを発揮できる舞台なのではないか。
途上国から出発し、戦後、高度成長を経験し、工業国、そして長寿国として有名になった日本にとって、長年、「環境と健康」は大きなテーマであった。こうした「日本の経験」は世界に還元しうるものであるし、積極的に還元していく責任を持っているだろうと思う。
ぜひ日本はこのテーマについて積極的にリーダーシップを持って取り組んでいってほしい。

Friday, November 16, 2007

Health at a Glance 2007

OECD加盟国の保健医療は改善しているが、慢性疾患の管理の改善が必要
-必要な眼底検査を受けている糖尿病患者は半数のみ-

13日、OECD諸国の健康指標に関するデータ集「Health at a Glance 2007(図表で見る世界の保健医療2007)」が発表された。

さまざまな保健関連指標をグラフや表でクリアカットに見せてくれ、非常に分かりやすい。
Web版は無料でこちらから利用できる。

日本はというと・・・
0歳児平均余命世界一は堅持。やはり女性が貢献。
65歳平均余命は男女とも世界一(23.2、18.1)。
虚血性疾患で入院後30日以内に死亡する割合も3%と世界最低。
乳児死亡率も世界最低水準(2位)。未熟児の死亡も世界最低。
医療機器の普及率(CT, MRI)は2位のアメリカに倍以上の差をつけてトップ。(ただし放射線治療の施設の普及率は高いとはいえない。)
肥満率(BMI>30の割合)も世界最低。肥満増加率もダントツで最低。
   (なんとOECD平均は14.6%!!最悪のアメリカにいたっては32.2%!!!!!!!デブばっかり・・・。)
アルコール摂取量はOECD中6番目に低い。
平均在院日数は、OECD平均の2倍以上でダントツ長い。
医師にかかる割合もOECD平均の2倍以上(年間13.8回)で第1位。
一人当たりの医療費は、OECD平均以下の低水準。
国民総医療費がGDPに占める割合も平均以下。
一人当たりの医療費増加率もOECD諸国中4番目に低い。
医療費の内訳は、日本は治療・リハビリの占める割合が最も高く、公衆衛生の占める割合が低い。
腎疾患治療率は、腎移植は最低水準だが透析を含めると最高。
(糖尿病によって腎不全患者は現在急増中。腎透析は非常に高額な治療だが、高額医療費として国庫から大部分が賄われている。お陰で日本の腎透析にかかる医療費は1兆3千億円近い。ちなみに日本の公立学校の人件費の総額は1兆8千億円程度。)

一方で、
収入格差(Gini係数)は、OECD平均を超え、ジリジリと増加中。
人口あたりの医師数は0.2%とOECDで4番目に低い(OECD平均0.3%)。
看護師数は、0.9%とOECD平均(0.89%)とほぼ同じで増加率(2.5%)は3番目に高い。)
喫煙率(29.2%)は、OECD(mean 24.3)で5番目に高い。
低出生体重児(<2500g)出生率は、なんとOECD中2番目に多い。(原因として若年女性の喫煙率と高齢出産の増加が指摘されている。)
自殺率(10万人中19人)は、OECD(mean 12)中3番目に高い。

そして・・・
公的医療費のうち、公衆衛生・予防医学に使われる割合はというと・・・実は7番目に低い。なんとOECD平均の約半分(3.1 vs 1.6 [%])。

日本は、保健医療福祉のなかでもかなり「医療」に偏った社会であることがみてとれる。
それなのに医師の数は最低レベル・・・。でも医療機器はダントツで整っている。
なんとも矛盾した構造だ。

医療費削減と言われて久しい今日この頃。
世界水準から見れば、医療費はむしろ安い部類に入り、医療費増加率も低い日本。
更に世界中の国々が医療費を増やす方向に転じているというのに、唯一時代と逆行する日本。
数字を見れば、アメリカの医療がいかにボロボロか分かるのに、医療制度までアメリカ崇拝をやめない日本。
そしてその尊敬してやまないアメリカが本気で皆保険制度を検討し、選挙の最大の焦点となっている中、逆に自由化論議が巻き起こる日本。
10年前の世界を基準に議論が進んでいるようにしか思えない。

国民も「混合診療を全面解禁しろ」とマスコミに踊らされる前に、全面解禁したらどういった状況が生まれるのか、過去の世界の歴史を踏まえてよく考えるべきだろう。今度ばかりは厚労省も頑張ってほしい。

一方で、先日の混合診療違法判決は妥当なものだったと思う。
裁判官は、社会のニーズに合わせた法の解釈(つまり法社会学的な判断)をしたわけではなく、あくまで厳密な法解釈(概念法学)に基づいて結論を下している。裁判官が指摘したのは「現状の法律においては」混合診療を認めない理由が無い、ということ。決して混合診療解禁を助長するものでも否定するものでもないのだろうと思う。
しかし、残念なことに社会の一般的な受け取り方は異なっている。判決の具体的な検討も無く、その事実のみをもって違法判決が「混合診療解禁に一歩近づいた」と考える向きが多い。
混合診療を全面解禁するのか、それとも一部解禁するのか、全面禁止を継続するのか。
これまで混合診療が禁止されてきた理由、そして解禁した諸外国における結果などを踏まえて、もっと深い議論が起こってほしい。

p.s.
ちなみに、お国柄が出て面白いのは、「よい健康状態」と報告した人の割合(主観的な健康度)。
日本は下から2番目、そして、アメリカは何と!!上から2番目!!!!!!
日本人の心配症はさておき、アメリカは3人に一人がメタボっている世界の(肥満)超大国。
なのに、健康状態は世界で2番目にいい・・・?
能天気というべきか、何と言うべきか・・・。

Tuesday, October 23, 2007

235 scientific journals

世界中Global Healthだらけ。

NIH(米国衛生研究所)がすごいことを仕組んだらしい。

NIH Launch of the Council of Science Editors'
2007 Global Theme Issue on Poverty and Human Development


昨日(10/22/2007)、世界の主要な科学雑誌235誌で、一斉に"Poverty and Human Development"の記事が掲載された。

論文を掲載した雑誌は、The Lancetはもちろんのこと、BMJ, JAMA, Nature, Science, Cell, Am J Public Health, Epidemiology, Family Medicine, Pediatrics, Circulation, Hypertension, Stroke, Obstetrics & Gynecology, Anaesthesia, Neurology...などなど

"More than 230 scientific journals throughout the world will simultaneously publish articles devoted to the topic of poverty and human development. Eight of the most outstanding articles from these journals addressing critical issues of global health research and policy were selected by a panel of NIH and CSE experts for presentation. New research in these articles examines interventions and projects to improve health and reduce health-care inequities among the poor."


取り上げられたテーマは、

childbirth safety, HIV/AIDS, malaria treatment, food insufficiency and sexual behavior, interventions to improve child survival, physician brain drain from the developing world, influenza's impact on children, use of satellite technology to predict disease outbreaks

と、多種多様。
ほぼGlobal HealthのHot Issuesを網羅している。

出版された論文は、こちらから閲覧可能。

あまりにも多すぎて・・・・いい論文を探すだけでも一苦労しそうだ。

今回のキャンペーン選りすぐりの8論文については昨日NIHで開かれたイベントで表彰されたそうだ。

これだけ世界は熱くなっているが、残念なことに、今回の235誌の中に日本の雑誌はひとつもない。
医学の世界でニュースにすらならない。

日本の医学界も真剣にアメリカ以外の世界のことを考えてみてほしいものだが...

Sunday, October 21, 2007

Women Deliver Launches!

3日間にわたって開催されたWomen Deliver Conferenceが昨日、幕を閉じた。

Women Deliver Conference Launches New Commitments (PR Newswire)

参加した各国政府や国際機関、NGOからは、MDG-4/5(MNCH)の達成を高い優先度を持って取り組むことが宣言され、そのために、女性のエンパワメント、ジェンダー平等をmultisectoralに推進していく必要性が訴えられた。

イギリス政府は、Women Deliver Initiative推進のためUNFPAに1億ポンド(日本円にして230億円超!)拠出することを確約し、日本政府は、Global Healthを来年のG8洞爺湖サミットおよびTICAD IVの中心課題に据
えることを宣言した。

主導権をイギリス・ノルウェーに持っていかれまいと、日本政府は、人間の安全保障のコンセプトに立脚した包括的なGlobal Healthのビジョンを提示したいと意気込んでいる。近いうちに政府から政策が表明されるようだ。

日本はこれまで、途上国であった「日本の経験」を2国間援助の枠組みの中では生かし、確かな成果を挙げてきた。しかし、国際的にはアピールが十分ではなかったと思う(これはGlobal Health分野に限らないと思うが・・・)。

ぜひとも今後のGlobal Health分野での日本のリーダーシップに期待したい。
そして、国内におけるGlobal Health分野が整備され、政策、研究、実践がリンクしあいながら発展する環境が生まれることを願うばかりである。

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Safe Motherhood Nairobi Conferenceの20周年として、Women Deliver Conferenceの果たした役割はどのようなものだったのだろうか。

もちろん、Materal Mortality/Morbdityについて、再び政治的に強いcommitmentを引き出すことができたことは大きな成果だろう。
しかし、私は何よりMDGsでバラバラに分断された「ケアの継続性」、そして「統合的・水平的なアプローチ」という観点に再びスポットが当たったことが重要だったのではないかと思う。

MDGsでは、貧困の撲滅(MDG-1)、初等教育の普及(MDG-2)、女性のエンパワメント・ジェンダー平等(MDG-3)、乳幼児の健康(MDG-4)、妊産婦の健康(MDG-5)、感染症(MDG-6)などがバラバラのターゲットとして設定された。
成果主義の観点からはこうした分割は確かに正しいが、これらの目標が互いに関係しあっていることを忘れてはいけない。関連性についての認識はあっても、具体的にそれがプロジェクト・プログラムに落とし込まれる際には、Goal設定としてどれか1つが選択されてしまう現状がある。
例えば、乳幼児と妊婦がバラバラにスポットを浴びたために、それらの継続性の観点が失われてしまい、新生児のケアの重要性が見落とされたり、女性のライフサイクルのうち、妊産婦としての女性の健康のみに着目することで、社会における女性のエンパワメントの視点を失ってしまったりすることはしばしばある。

妊娠から出生・発達(Maternal, Neonatal and Child Health)という「継続性」、そして女性のライフサイクルという「継続性」に着目した「Continuum of care」の視点は、1994年のカイロでの国際人口・開発会議で注目されたReproductive Health & Rightsの思想(更にはSexual and Reproductive Health & Rights)への回帰ともいえると思う。

また、それぞれの目標がバラバラに取り組まれることで、似たような介入が重複して行われたり、逆に1つの介入が他の介入の妨げになってしまうような事態も起こっている。先のL. Garrettの指摘はその最たるものではある。
統合的・水平的なアプローチの重視は、レシピエント政府のオーナーシップのもとで各ドナーが協調することで、こうした無駄や対立した介入をなくすことにつながる。Women Deliverをめぐっては2つの統合の方向性があるのではないかと思う。
1つは、公衆衛生のシステム強化というベースの元で、MNCHや感染症を含む種々のGlobal Healthのアプローチが統合されること。そして、もう一つは、Global Healthにおける「妊産婦の健康」という視点から、Global Developmentの枠組における「社会における女性」という視点に統合されること(Lancet 2007;370:1347-1357)だ。

これは、医療の世界で言うならば、臓器別の高度先端医療を全人的医療に統合するという難題に近いものであるように思える。さまざまなドナーのさまざまな思惑が絡む中、こうした作業を行っていくのは並大抵の仕事ではないだろう。
概念的・政治的な方向性はついた。さて、これをどう現実のアプローチとして落とし込んでいくのか。これからが正念場だ。

Wednesday, October 17, 2007

Women Deliver

夏を挟んでずいぶんと中断していたBlogを再開。

この間にも世界はすごい勢いで動いてきた。

何より大きな動きがあったのは、母子保健(Maternal, Neonatal and Child Health: MNCH)をめぐる動きである。

今年は"Safe Motherhood Initiative"が始まって20年という節目の年であると同時に、昨年のMDGs中間(1/3)評価で達成が極めて難しいと危惧されたMDG-5に対し、国際社会が重点的な取り組みを開始するべき年でもある。

9月26日には、NorwayのStoutenburg首相がMGD-4,5、特にMGD-5に焦点を当てたグローバルキャンペーン"DELIVER NOW FOR WOMEN + CHILDREN"を発表、10億ドルの拠出を表明した。
また、10月4日には、Clinton Global Initiative(CGI)の年次会合が開かれ、同じくMNCH分野へ12.5億ドルの拠出が発表された。

いま、MNCHの分野に、とにかく大きなお金が動いている。

そして、こうした動きに対する1つのまとめとなるのが、明日(10月18日)からロンドンではじまる国際会議"WOMEN DELIVER"である。これまで母子保健の分野で活躍してきた国際機関、NGO、GO、そして研究者らが一同に会し、これからのMNCHのあり方を議論するという重要な会議である。


更に10月29日~11月2日には北京でGlobal Forum for Health Researchが開かれ、Maternal mortality研究をめぐる問題についても話し合われる。


WOMEN DELIVERに合わせ、学術面からの報告も相次いでいる。

10月12日には、WHO/UNICEF/UNFPA/World Bankより2005年のMMRに関するモニタリング報告書"Maternal Mortality in 2005"が、発表された。
MDG-5達成のためには、1990年から2015年まで年平均5.5%のMMR低下が必要であるとされているなか、2005年のMMR低下は世界平均で1%以下、サブサハラアフリカでは0.1%でしかなかったことが明らかとなった。

また今週(Oct. 13-19)のTHE LANCETでは、WOMEN DELIVER開催に合わせ、紙面のほぼすべてを使って妊産婦の健康に関する特集を組んだ。(THE LANCET 2007; 370, 1283-1392)


まだ読み始めたばかりなのでコメントは避けるが、これまでのMaternal Mortalityの現状を総括し、今後"Women Deliver"へと発展するMNCHのあり方について極めて重要な視点が得られそうだ。

p.s.
このBlogスタートのきっかけともなったL. Garrettの"The Challenge of Global Health"。この中で著者はHIV/AIDSを筆頭とするVerticalなGlobal Health Programsへ資金が大きく流れたことで、逆に地域の公衆衛生を担う現場の人手が不足しているという現状を指摘し、地域の公衆衛生の改善というHorizontalな介入の重要性を説いた。あれからもうすぐ1年。Global Healthを取り巻く環境は大きく変わりつつあるように思う。
国連やGOはもとより、Gates FoundationやClinton Initiativeの巨額の基金が、今度は母子保健の分野へと流れ始めた。
また、Brown政権のイギリスは、こうした流れと平行してInternational Health Partnership(IHP)という保健システム強化を主眼とするイニシアティブを先導しはじめている。

地域保健のempowermentの鍵であるMNCHが大きくテコ入れされ、同時に保健システムというgovernanceの改善に注目が集まることで、L. Garettの指摘する空洞化は改善されていくのかもしれない。

こんな世界の流れの中で、日本はどのような形で貢献できるのか。
この流れというのは、実は日本がこれまで得意としてきた分野そのものなのではないかと思う。日本で発展した母子健康手帳(MCH Handbook)は、まさにMNCH、Continuum of careの概念に通ずるものであるし、地域保健のシステム強化も、かつて途上国であったこの国が今日まで経験してきたことそのものであるように思える。

いまだGlobal Healthの潮流の主導権は欧米にあるが、そうした意味では日本はこの流れにおいて重要な役割が果たせる可能性がある。来年のTICAD IVやG8サミットをはじめ、来年は日本がGlobal Healthに関わるConferenceを主催する機会も多い。こうした意思決定の場を通し、ぜひ日本も役割を担っていってほしい。

drasticに動き続けるGlobal Healthに今後も眼が離せない。

Thursday, June 28, 2007

State of World Population 2007:

 
昨日(6/27)、UNFPAは世界人口白書2007を発表した。

白書の内容を分かりやすくまとめたPresentationはこちら↓


(もっと大きいサイズで見たい方はこちら

今年のテーマは『都市化』。
白書によると、2007年の世界人口は、約66億1590万人(昨年比7560万人増)。
2008年には世界人口の約半数、約33億人が都市の居住者となり、その後も都市人口は増大。2030年には約49億人(!!)に膨らみ、うち80%はアジア、アフリカなどの開発途上国に集中する。

現在世界人口約66億の約半数が都市に集中している状況を明らかにし、今後開発途上国を中心に都市人口が急増することを予想。そうした来るべき都市部での急激な人口増加に対し、途上国各国の備えは十分ではないとしている。

今回の白書の重要な点は次の2点。

・ 途上国における都市の拡大を、これまで語られてきた負の側面ばかりでなく、正の側面を公的に捉えている点。
・ 都市の人口集中は、これまで語られてきた「農村からの人口流入」以上に「貧困層での出産が多いこと」が原因であるという新しい視点。


これまで開発の世界において、開発途上国における『都市化』は、環境破壊、国内格差の拡大、過密地域(スラム)の拡大、治安の悪化・・・といった負の側面から捉えられることが多かった。
今回の白書では、都市化のリスクを追認しつつ、一方で都市の拡大は不可避であり、都市化のもつ利点を生かしたリスク軽減策こそが重要であるとして、肯定的に捉えなおした。
"Urbanization—the increase in the urban share of total population—is inevitable, but it can also be positive. The current concentration of poverty, slum growth and social disruption in cities does paint a threatening picture: Yet no country in the industrial age has ever achieved significant economic growth without urbanization. Cities concentrate poverty, but they also represent the best hope of escaping it.
Cities also embody the environmental damage done by modern civilization; yet experts and policymakers increasingly recognize the potential value of cities to long-term sustainability. If cities create environmental problems, they also contain the solutions. The potential benefits of urbanization far outweigh the disadvantages: The challenge is in learning how to exploit its possibilities."



その上で、そうしたリスク低減策において必要な政策的イニシアティブとして、次の3点を挙げている。

#1 都市における貧困層に対する最低限の権利を尊重する

#2 貧困を削減し持続性を担保する、長期的で幅広い視点に立った都市計画を策定する

#3 人口に関する研究施設・専門家は、CBOや社会運動、政府、国際的な市民社会が将来都市人口拡大の姿を改善するのをサポートする重要な役割を担っており、その役割を果たすべきである


#3はさておき(苦笑)、今回の白書の提言で際立ったのは、都市部での貧困層の権利、生活の改善といったテーマである。
こうした都市部の貧困層のEmpowermentの必要性はこれまでも指摘されてきたとおりだが、重要なのは、そのEvidenceとして都市部での人口増加の原因分析が詳細に行われたことだ。
分析の結果明らかになったのは、人口増の主な原因は、これまで言われてきたような「農村部からの流入」以上に「都市部の貧困層の出産が多いこと」によるということだ。そのため、しばしば前者の視点をベースに実施されている人口移動防止策の効果は実は薄く、何より都市部貧困層のEmpowerment(例えば居住地域の確保やFamily Planningの手段の提供、清潔なへのアクセスの確保、強力なコミュニティの構築など)が必要だと強調している。


今年の世界人口白書は昨年のものとアプローチの方法がとても似ている。
昨年の世界人口白書2006のテーマは「女性と国際人口移動」だった。
経済グローバリゼーションによる国際的な人口移動の増加が不可避であることを認め、国際人口移動が持つメリットとデメリット双方を分析した。その上で、国際人口移動のメリットを十分に生かしリスクを軽減する政策のあり方、そして移動において女性や子どもを守る必要性を提言した。

理想のみを語るのではなく、現状を認識した上で、メリットとデメリットを分析し、デメリットを減らしてメリットを十分に生かせる政策提言を行うという現実的アプローチの方法は双方に共通している。(2005以前とはスタイルが大きく変わった。)

2006が、国と国との間の人口の現状分析と政策提言であったのに対し、白書2007は、途上国国内における人口の現状分析と政策提言として位置づけることができる。UNFPAは、2006・2007を通して、今後の世界人口の大きな流れである「グローバリゼーションと都市拡大」というテーマに挑んだとも言えるのではないかと思う。

この2テーマは、世界各国の政治的な思惑が交錯し、簡単には筋道が付けづらいテーマである。しかし一方で国際社会が約束したMDGsの達成期限までもうすぐ半分が経過する中で、本気で目標達成を目指すのならば避けては通れないテーマでもあるはずだ。

有効な手段を打ち出し、よりよい世界が築けるかは、まさにこれからにかかっているということだろう。

Friday, June 15, 2007

Revised International Health Regulations came into force

今日、とうとう改定国際保健規則IHR(2005)が発効した。

2005年のWHO総会(WHA)により合意された今回のIHRは、WHO加盟国が、感染症や潜在的な国際公衆衛生上の問題となる緊急事態に、サーベイランス、情報提供および対応を含め、どう対処するかに関する多国間の法的な枠組みを提示している。

IHR:国際保健規則とは、”国際交通に与える影響を最小限に抑えつつ、疾病の国際的伝播を最大限防止する”ことを目的としたWHO憲章に基づく国際規約。

1969年に制定されたIHRは、国際社会が認識すべき公衆衛生的危機に対し、加盟国はこれらの発生をWHOに報告し、水際対策を行い、最大限の保健処置を行うことを規定した。これまで1973年、1981年と2度改定され、黄熱、ペスト、コレラの3つが対象疾患に指定されてきた。

しかし現在、これら3疾患が国際公衆衛生上の危機となることはない。
代わりにグローバリゼーションの進展とともに新たな国際的な脅威として現れてきたのは、HIV/AIDSやSARS、H5N1などの新興感染症、結核、マラリアなどの再興感染症である。

WHOは1996年には次のような声明を発表した。

「我々は、今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはや、どの国も安全ではない。」

1999年、日本で感染症新法が制定されたのもこうした流れの中にある。

こうした状況の中で、IHR改定に向けて長年(本当に長年)作業が行われてきた。
そして2年前の2005年、ようやく決定されたのが、今日発効のIHR(2005)である。

IHR(2005)の新たな考え方は、世界的な連携体制の下で、(1)既知のリスクを封じ込め、(2)未知のリスクに対応し、(3)備えを改善することでGlobal Health Securityを確保しようというものである。

最大の変更点は、 WHO加盟各国が、新たな(未知の)Global Health Crisisに対して連携して備えられるような仕組みが導入されたこと。そしてWHO、加盟各国に課される責任、義務がこれまで以上に大きくなったことの2点だ。

これまでのIHRで指摘された問題は、新たな感染症への対策が難しかったことだけではない。
各国のIHRに対するcomplianceを確保する機序が欠如していたこと、WHOと各国との協力体制がしかれていなかったことなどの問題もあった。
例えば、中国がSARSやH5N1の患者発生を隠蔽していたことなどは有名だ。
経済損失への恐れから情報の透明性が確保されず、第3者専門機関としてWHOの執行すべき権限が十分に付与されていなかったのだ。

IHR(2005)では、加盟各国による報告対象疾患が拡大され、各国のHealth Crisisに対するCore Capacityが規定された。

Core Capacityとは、各国が”感染症を含む異常事象全体”に対応するsurveillanceやoutbreak対応の最低限の能力のこと。つまり、このことは国の公衆衛生危機管理体制そのものを強化することを指す。

”感染症を含む異常事態全体”としたのは、IHR2005では、化学物質などを含めた包括的なGlobal Health Riskとして“Public Health Emergency of International Concern(PHEIC)”という概念で捉えられるようになったためだ。
参照:Effects of New Internatonal Health Regulations (medscape)
(PHEICの決定アルゴリズムは右の図のとおり。)

このアルゴリズムを見ると、昨今日本で流行している麻疹は、PHEICに該当するのではないか、と思えてくるが・・・。日本では、まだまだワクチンに対 する公衆衛生的な重要性の認識が低い。今回の騒動を通して、公衆衛生は過去の話ではないということを再認識できればいいのだが、マスコミは煽り立てることばかりに躍起になって、問題の本質を見ようとしていない。それどころか、国際保健規則の改正について報道しているマスコミは現在のところ日経新聞のみだ。しかも記事が短い・・・。世界とのギャッ プに驚かざるを得ない状況だ。

しかし、問題は多いとはいえ、日本など、自力で危機管理体制を強化できる国はまだいい。自力強化など到底できない国は多い。こうした国々のCapacity Buildingをどのように国際社会がサポートしていくかが今後の課題となるだろう。

今回のIHR(2005)の発効によって、世界はGlobal Health Crisisに対する協調体制へ大きく舵を切った。世界の国々の思惑、利害が交錯する中、こうした強力なシステムを創り上げていく作業は相当大変なものだっただろう。

しかし、これからがもっと大変だ。システムを軌道に乗せなければならない。しかも、迅速に。
目の前には、H5N1という大きな脅威が待ち構えているのだから。

Wednesday, June 6, 2007

Development Pornography

久々のBlog。いろいろ書きたいことはあったが、 いつの間にか1ヶ月以上も更新せずに放置していた。5月病も終わったことだし(?)そろそろ再開。

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開発、特にGlobal Healthの分野に関わるようになって数年。
とても奥が深いこの分野はまだまだ学びの途上だが、最近になって、少しずつ冷静に批判的視点を持ちながら現場や文献に接することができるようになってきた。

国際開発は、どの分野であっても常に超えるべき大きな障壁が立ちはだかり、その問題解決に集中するあまり、中立的・批判的な視点を失ってしまうことがよくある。
Donorにとっての中立的・批判的な視点とは、「Donorの視点」以外の視点、すなわち「外部からの視点」や「当事者(Recipient)の視点」である。
批判的視点を失うと、自らが良心の元にとった行動が結果的に相手に害を与えていたとしても、それに気づくことはできない。

「開発ポルノ」というテーマは、まさにその最たる例かもしれない。

Fair Trade Photography Battles 'Development Pornography'
Technology, Health & Development Blogより。

"Development Pornography" 「開発ポルノ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
まずはこの映像をみてほしい。



センチメンタルな音楽にあわせ、栄養失調で痩せ細った子どもたちの姿、劣悪な生活を余儀なくされる人々の姿が映し出され、Darfurの悲惨な状況が伝わってくる。まさに「貧困」そのものである。
この映像をみて、私たちは何を感じるだろうか。
「かわいそうだなぁ。」、「何かできることがあればしてあげたい。」、「同じ世界なのにどうしてこんなに差があるのだろう。」、「平和な国に生まれてよかった。」、「遠い国の話で私には関係がない。」等々・・・人によって捉え方はさまざまだろう。

しかし、気づかなければならないのは、こうした視点はあくまで「Donorの視点」、「外部の視点」にすぎないということだ。
こうした映像・写真表現に当事者の視点が入る余地がないのだ。当事者のDarfurの人々は、この映像を見てどういった感想を持つだろうか。「白人の裸を写せばポルノなのに、アフリカ人の裸を写せばチャリティーであり、称えられるのか。」 [参考] と疑問を呈するかもしれない。あるいは「私たちにも日常があり、誇りがある。哀れみの目で見ないでほしい。」と思うかもしれない。

“Upwards of 90% of the images of the majority world that are seen in the western media are produced by white photographers from the USA or Europe. This results in a one dimensional view often driven by a negative news agenda or the need to raise money.”
「西欧諸国のメディアでみられる途上国世界の写真の90%以上は、アメリカやヨーロッパの白人の写真家によって撮影されたものだ。こうした映像・写真表現は、(途上国世界に対する)一元的な視点を生み出しており、そうした視点はしばしば、ネガティブなニュースの議題や(援助機関の)資金調達の必要性から引き出される。」

“Recognizing everybody’s communication rights in the information society is not mere slogan or campaign; it’s an integral part of social justice.”
「情報社会における各人のコミュニケーションの権利を認識することは、単なるスローガンやキャンペーンではなく、社会正義の統合的な一要素である。」
[quotes from kijiji.com]
私は、こうした映像・写真表現を否定する気は毛頭ない。ただ、それを「当たり前」として容認する姿勢をとってならないと思うだけだ。

こうした映像は、確かにインパクトがあり、人々に「気づき」の機会を与える上で大きな役割を担っており、人々の良心-時にはそれ以外の場合もあるが-から寄せられる寄付はNPOや国際機関等の意義ある活動を支える大きな原動力となっている。そして、世界においてNPO(NGO)の存在感を強めることにも大きな貢献をしてきた。こうして得た資金により多くの人々が救われているのは事実だ。

しかし、一方で被写体となった彼らには彼らの生活があり、日常がある。そして誇りがある。「アフリカ=貧困・エイズ」といった偏ったステレオタイプを植えつけられる彼らの尊厳、人権をどう考えるのか。
人権を守るのための報道活動が、一元的なステレオタイプの助長、そして彼らの尊厳の蹂躙につながってはいないのか、今一度よく考える必要がある。

近年になって、こうした問題における当事者(国際NGOなど)の一部では、この問題に気づき、真剣に議論し始めている。

"Part of the reason for this kind of post-colonial choreography by INGOs is because they are still required to be the visual mediators of the poor world to the rich world. In Western society, our INGOs are inter-cultural gatekeepers. They know both worlds and report the one to the other. This presents them with many representational dilemmas with their own publics and their own civil societies 'back home'."
「国際NGOによる、こういったポストコロニアル
choreography*の理由の一つは、彼らが先進国に途上国の姿を映し出す媒体としていまだ必要とされているためだ。西欧社会では、国際NGOは異文化の門番となっている。彼らは両方の世界を知り、途上国から先進国へレポートするからだ。こうした役割のため、彼らは、彼らの拠点(先進国)のpublic**やcivil society***との間に多くの表現上のジレンマを持つことになるのだ。」
*) choreography: 振り付け、つまり(一元的な)「貧困」のイメージを構成すること
**) public: 公衆、一般の人々、ここでは途上国に対する固定化した観念を持つ人々のこと
***) civil society: 市民社会、ここでは国際NGOへの見識があり、途上国を知る人々のこと

つまり、国際NGOなど、途上国につながりを持つ組織は、先進国の一般の人々=publicにとって、途上国を映し出す鏡としての存在を期待されており、publicは国際NGOの活動を通して「途上国」を知ることになる。一方、国際NGOは、自らの役割(貧困撲滅)を果たすためには、publicが「貧困」の現状を知ることが必要であり、自らの活動への理解者、支援者となってほしいと望む。つまり必然的に国際NGOは、途上国の「貧困」の側面を強調することになる。こうして「途上国=貧困」あるいは、「途上国=エイズ」像ができあがる。
一方で、途上国を知る市民の輪=civil societyからみると、こうした国際NGOによるプロパガンダは、一面的でしかないように映るかもしれない。

しかし、こうした問題が認識されはじめたのは最近のことであり、DonorやJournalistの中でもまだまだ認識に差があるのが現状だ。

私たちは油断をするとすぐ一元的な視点に陥ってしまい、抜け出せなくなる。
一元的な視点は、影響がないばかりか、時に害すら及ぼすことがある。
先のL. Garrett氏の論文は、まさにそれを指摘した典型例だろう。)

私たちが今行っていることがどういった影響を与えうるのか、広い視点で検討ができるよう、常に広く世界にアンテナを広げている必要があるだろう。


次回は、少し違った視点から、「格差」をテーマに先入観と現実社会のズレについて考えてみようと思う。

Thursday, April 26, 2007

The 80th General Meeting of the Japanese Leprosy Association

来る5月、第80回となる日本ハンセン病学会総会・学術大会が横浜で開催されます。

今年は、WPROの結核ハンセン病担当官のSumana Barua氏が講演されます。
国内のハンセン病にとどまらず、世界規模でのハンセン病、そして国際協力まで、とても面白そうなセッションが目白押し!
日本の国際保健協力のあり方を討論するセッションや市民公開講座(日野原先生がいらっしゃいます。)ももたれます。

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■ 特別講演:5月18日(金)14:55~15:40


Updates on th leprosy situation in WHO-Western Pacific Region focusing on future challenges 

Sumana Barua(STOP-TB and Leprosy Elimination Unit WHO-Western Pacific Regional Office)
座長:石田 裕 国立国際医療センター国際医療協力局


■ シンポジウムⅠ:5月18日(金)15:55~18:00

課題:これからの日本の国際協力

座長:スマナ・バルア WHO西太平洋地域事務局 結核ハンセン病担当官
    後藤正道 鹿児島大学大学院人体がん病理学

■ 県民・市民のハンセン病公開講座

主催:日本ハンセン病学会

共催:横浜市健康福祉局
後援:神奈川県
開催期日:2007年5月19日(土)14:00~17:00
会場:横浜関内ホール
231-8455横浜市中区住吉町4-42-1
TEL:045-662-1221
入場:無料(当日ご自由にご参加下さい)

1:「シュバイツアー病院を訪れて」
 日野原重明 先生(聖路加国際病院理事長、文化勲章受章者)

2:師弟対談:「金持ちより心持ち」
 日野原重明 先生、Sumana Barua 先生WHO感染症担当官)

3:「私ができる仕事~伊波(いは)基金への夢~」ハンセン病回復者の半生
 伊波(いは)敏男 氏(作家・ハンセン病回復者)

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この大会、以前、私が大学でハンセン病の市民講座を開催した際に講師をお願いした大学の大先輩が大会長を務められており、また以前、私が代表を務めてい た国際保健のフォーラムで基調講演をなさってくださったBarua先生が特別講演をされます。さらにシンポジウムでは私の友人も発表します。さまざまな意味で私自身ともつながりがある大会で、ぜひ参加したいと思っています。

Blogをご覧になった皆様もぜひぜひ会場へ足をお運びください。

Tuesday, April 24, 2007

Aid groups halt work in western Darfur border area

さっき入ったニュース。今日は2本も書くことになってしまった。

Aid groups halt work in western Darfur border area (Reuters AlertNet)

Oxfam、Save the Children、Mercy Corpsなどの国際NGOが暴力が激化するUm Dukhun(西部Darfur/Chad・中央アフリカ国境地帯)での活動を停止することを決めた。この地域はDarfur紛争の中心地で10万人の人々が住んでいる。ここ数週間、この地方では武装集団によるNGO職員への襲撃が相次いでおり、苦渋の決断を迫られた模様。


一方で、Sudan Tribuneは、Sudanの防衛大臣のインタビュー記事を掲載。

Defence minister says Sudan will fight foreign intervention

もし国連が一方的にSudanに軍を送れば、政府はSudanが第2のIraqになるのを防ぐために戦うだろうと脅迫。欧米やIsraelが望んでいるのは、統一Sudanを壊し、弱い5つの国に分断することだ、と主張した。Sudanに駐留すべきなのは、AUであって、国連ではない。国際社会は資金不足の続くAUへの資金供与を強化すべきだとも発言。

DarfurへのUN/AUを偽装した武器輸送に関しては、”Iraqに大量破壊兵器は見つけられたか?そして彼らは今までIraqで何をやってきた?”と国連の非難を一蹴した。

ますますもって先行き不透明となってきたDarfur危機。
今後の国連、そしてアメリカの動向に注視したい。

そして、丸裸にされた10万人の人々が安心して暮らせる日が戻ってくることを願ってやまない。

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テクノラティプロフィール

Monday, April 23, 2007

Tadataka Yamada: Keynote Speech @ The 4th Annual World Health Care Congress

一昨日、昨日とWashington, D.C.で開催された世界ヘルスケア会議。
山田忠孝氏によるオープニング基調講演が開かれ、今日オンラインで視聴できるようになりました。

Tadataka Yamada: Opening Keynote Address @ The 4th Annual World Health Care Congress(.mov file)

山田忠孝氏はBill & Melinda Gates Foundation(ゲイツ財団)の主要部門、Global Health ProgramのExecutive Directorであり、今後のGlobal Healthの行方をにぎるkey personの一人。

先のForeign Affaris(jan/feb, 2007)におけるL. Garrett氏による批判に答える形で、ゲイツ財団の今後の方針が明らかにされました。

L. Garrett氏の論文では、三大感染症、特にHIV/AIDSに過剰な関心と資本投下が行われることで、他の重要な地域保健システムを維持することが困難になっているという現状を分析し、このままでは地域保健システムが崩壊し、途上国における保健状況は悪化しかねないと警鐘を鳴らしました。

例えば、集中的な資本投下が行われたセクター(例えばAIDS治療)に賃金インセンティブが働き、これまで地域保健を担ってきたヘルススタッフがそちらに流れてしまうという現象が起こり、より基礎的なインフラとしての地域保健・公衆衛生に従事するスタッフが不足に陥ってしまっている状況が明らかになりました。
そして同時に、Recipient Sideが多額すぎる資金をマネジメントすることができず、資金があふれ出し、すでに汚職や腐敗が進行しているという分析もなされました。

この論文の発表は、これまでのGlobal Healthの関係者の枠を超えて関心を集めており、非常に大きな論議を醸し出しています。(これまでもLancetのChild Survival Seriesなどでも同様の問題点は指摘されてきたものの、関係者の間で問題意識が共有されているにすぎませんでした。米国外交の行方を占うForeign Affairsに掲載されたことで問題の大きさが改めて浮き彫りになったといったほうが良いのかもしれません。)

今回のSpeechは、こうした批判に答え、今後のゲイツ財団の方向を位置づけたともいえます。
山田氏は、現在のGlobal Healthをめぐる最重要課題を「不公平性 Inequity」と位置づけ、その解決を妨げる要因として人材の不足・偏在・流出を大きな問題としました。
偏った点の介入(AIDS対策、など)だけでなく、より公衆衛生的・地域保健的な面の介入へのFundingを強化する必要性、そして、汚職防止のためのFundの流れのモニタリング・評価を強化する責任も明確にしています。
同時に、安価で効果的な医薬品(ワクチンなど)の基礎研究を推進する投資も重要であることを繰り返しています。(ちなみに、山田氏は現職就任まで巨大製薬企業gskの研究開発部門のDirectorでした。)

これまでのHIV/AIDSへの集中投下から、より公平に世界の公衆衛生改善に寄与しうる投資へ、そして財務のmanagement強化とaccountability向上に向けてゲイツ財団は舵を切ることになりそうな予感です。

そして、来る7月16-18日、今度はPublic Health CongressがD.C.で開催されます(上述会議と同じWorld Congressが主催)。
そして・・・この会議での基調講演は、なんと、Laurie Garrett!!
まさに狙ったような人選ですね。本当に面白そうで目が離せません。

あぁ会議でてみたいなぁ・・・でも学生でも4万円近くするみたいだなぁ・・・無理無理(苦笑

p.s.
ちなみにLaurie Garrett氏は、"Big Ps"といわれる3大ジャーナリズム賞、つまりPeabody賞、Polk賞、Pulitzer賞をすべて受賞しているただ一人のジャーナリスト。特にGlobal Health分野を専門とする。
現在は外交評議会Council on Foreign RelationsのSenior Fellow for Global Healthという立場。
外交評議会はアメリカ外交政策の奥の院と言われ、この評議会の機関雑誌Foreign Affairsは、その後のアメリカ外交政策に深く関わっている。たとえば、Samuel P. Huntingtonの歴史的論文、「文明の衝突 Clash of Civilizations」は1993年にこのForeign Affairsに掲載されたもの。

Wednesday, April 18, 2007

Sudan flying arms to Darfur, UN panel reports

Sudan Flying Arms to Darfur, Panel Reports (New York Times)

昨日国連平和維持軍の展開をしぶしぶ認めたスーダン政府。
しかしその実態は・・・

NYTがすっぱ抜いた。

17日明らかになった国連の内部暫定文書によると、スーダン政府が国連安保理決議に反し、武器をDarfurへ空輸(しかもUNやAUの飛行機に偽装して!)しているらしいのだ。しかもその目的は武器輸送だけにとどまらず空中査察、さらになんと村への爆撃(!!)にも使用されているという。

レポートの内容が事実だとしたら、今後展開されるAU/UNのMissionは非常に危険性の高いものになるだろう。これがまだ内部文書である以上何も言えないが、せっかく第一歩を歩み始めた国連にとって与えているインパクトは相当大きいことは間違いない。

このレポートは、奇しくもスーダン政府が国連平和維持軍の受け入れを表明した翌日に明らかとなった。レポートの調査期間はごく最近で、昨年の9月から今年の3月までだった。

私は、スーダン政府のこの偽装がかなり戦略的に行われてきたのではないかと感じる。
もしスーダン政府がすでに昨年の9月の段階で、国際的圧力に耐えることは不可能で国連軍の受け入れが不可避であるということを認識していたとすれば、理に適っているからだ。
国連の査察団の受け入れを頑なに拒否し続けてきたのは、この戦略が国際社会に明らかになるのを防ぐためと考えることができるし、いずれ来るであろう制裁、国連軍の受け入れまでの時間を稼いで、その間にUN/AUの名の下に破壊活動を行って住民への悪印象を植え付け、その後の国連活動を非常にやりづらくするため、と考えることもできる。
つまりUN/AUを、スーダン政府/Janjaweedと、対立する反政府組織/非アラブ系住民の共通の敵に仕立てあげてしまおうというわけだ。

もしUNが保護する対象から攻撃を受けて死者が出るような事態となったら・・・
イラク戦争に辟易している国際社会はどう反応するだろうか。これを「人道援助」と呼ぶことを許すだろうか。

さらにスーダン政府は空輸を継続的に行ってきたことで、UN/AUをまじえた内戦の長期化に備え、すでにDarfurにおける武器の蓄積がかなり進んでいるとも考えられる。

もしスーダン政府が状況を理解してこうした戦略をとってきたとするならば、Darfur(&Chad)紛争の解決は、想像以上に困難な道となるのかもしれない。

Tuesday, April 17, 2007

Sudan agrees to UN troops

Sudan agrees to UN troops
Ban hails Sudan's UN troops move

国際社会が非難し続けて数年、ついに・・・とうとうSudanがDarfurへの3000人規模の国連軍の介入を認めました。
4年間の内戦で、少なくとも20万人(40万人以上とも言われる)が亡くなり、240万人が家を失ったと言われる「史上最大の人道危機」に、とうとう明るい光です。
現在Darfurで展開しているAU(アフリカ連合)軍7000人と合わせて一万人。国連が想定するDarfur missonの2nd phase(国連によるAU軍への後方支援と軍事支援)についに入ることになったと言えます。
まだまだ国連が目標とする2万人規模のUN/AU混成軍には到底及んでいませんが、危機解決に向けての大きな前進であることには違いありません。
一方で、内戦は更に激化し、隣国Chadへも波及、すでに大量の国内避難民が発生している様子。
一刻も早い大規模な介入が実現し、人々が安心して暮らせる日々が戻ることを願ってやみません。

とはいっても…夢物語の実現は簡単にはいく話ではないでしょうね。

何はともあれまずは紛争解決が最優先事項であることは間違いないものの、実際は、―多くの国がそうであるように―紛争終結後の復興開発こそが本当にハードなステップとなるわけですしね。国際社会の注目が集まり多額の援助が集まる間はいい。問題は"silent tsunami"化した後、つまり、緊急を脱して注目度も援助額も減少したときでしょう。

そして、和平後のSudan自体の動向も大きな問題です。もし多くの紛争を抱えるSudanがそのまま分裂することになったら・・・(Sudanは西部Darfur地方のほかにも南部、東部でも紛争を抱えている)Africa全体に分離独立の機運が高まり、更に各地の紛争が激化する結果を招きかねない・・・。

今後の展開はAfrica地域全体のその後を占う上でも非常に重要になってくるだろうと思います。

Google、スーダン・ダルフール危機をGoogle Earthでマッピング実況

Wednesday, March 21, 2007

How to Promote Global Health: A Foreign Affairs Roundtable

How to Promote Global Health: A Foreign Affairs Roundtable

"The Challenge of Global Health"をめぐるラウンドテーブルがForeign AffiarsのWeb上で展開されていました。
Mar/Apr, 2007に掲載されたPaul Farmer氏の反論はこれがベースになっていたみたいですね。

Friday, March 16, 2007

From "Marvelous Momentum" to Health Care for All: Success Is Possible With the Right Programs (From Foreign Affairs)

From "Marvelous Momentum" to Health Care for All: Success Is Possible With the Right Programs

しばらくぶりです。
いろいろ忙しくなかなかいまだにBlogの更新が出来ないでいますが・・・

Foreign Affairs Jan/Feb2007のL. Garrett氏の論文("The Challenge of Global Health" そう、翻訳掲載が途中でストップしている・・・)の関連論文(Paul Farmer氏&L. Garrett氏 Mar/Apr,2007)が掲載されています。

Paul Farmer氏の指摘に続き、Laurie Garrett氏が更に返信しています。
まだつまみ読み程度ですが、とても面白そうな内容ですね。

更に、Mar/Apr, 2007には、Pandemic flu関連の論文も。
Unprepared for a Pandemic
こちらはpreviewまでしか読めませんが・・・・