Friday, June 15, 2007

Revised International Health Regulations came into force

今日、とうとう改定国際保健規則IHR(2005)が発効した。

2005年のWHO総会(WHA)により合意された今回のIHRは、WHO加盟国が、感染症や潜在的な国際公衆衛生上の問題となる緊急事態に、サーベイランス、情報提供および対応を含め、どう対処するかに関する多国間の法的な枠組みを提示している。

IHR:国際保健規則とは、”国際交通に与える影響を最小限に抑えつつ、疾病の国際的伝播を最大限防止する”ことを目的としたWHO憲章に基づく国際規約。

1969年に制定されたIHRは、国際社会が認識すべき公衆衛生的危機に対し、加盟国はこれらの発生をWHOに報告し、水際対策を行い、最大限の保健処置を行うことを規定した。これまで1973年、1981年と2度改定され、黄熱、ペスト、コレラの3つが対象疾患に指定されてきた。

しかし現在、これら3疾患が国際公衆衛生上の危機となることはない。
代わりにグローバリゼーションの進展とともに新たな国際的な脅威として現れてきたのは、HIV/AIDSやSARS、H5N1などの新興感染症、結核、マラリアなどの再興感染症である。

WHOは1996年には次のような声明を発表した。

「我々は、今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはや、どの国も安全ではない。」

1999年、日本で感染症新法が制定されたのもこうした流れの中にある。

こうした状況の中で、IHR改定に向けて長年(本当に長年)作業が行われてきた。
そして2年前の2005年、ようやく決定されたのが、今日発効のIHR(2005)である。

IHR(2005)の新たな考え方は、世界的な連携体制の下で、(1)既知のリスクを封じ込め、(2)未知のリスクに対応し、(3)備えを改善することでGlobal Health Securityを確保しようというものである。

最大の変更点は、 WHO加盟各国が、新たな(未知の)Global Health Crisisに対して連携して備えられるような仕組みが導入されたこと。そしてWHO、加盟各国に課される責任、義務がこれまで以上に大きくなったことの2点だ。

これまでのIHRで指摘された問題は、新たな感染症への対策が難しかったことだけではない。
各国のIHRに対するcomplianceを確保する機序が欠如していたこと、WHOと各国との協力体制がしかれていなかったことなどの問題もあった。
例えば、中国がSARSやH5N1の患者発生を隠蔽していたことなどは有名だ。
経済損失への恐れから情報の透明性が確保されず、第3者専門機関としてWHOの執行すべき権限が十分に付与されていなかったのだ。

IHR(2005)では、加盟各国による報告対象疾患が拡大され、各国のHealth Crisisに対するCore Capacityが規定された。

Core Capacityとは、各国が”感染症を含む異常事象全体”に対応するsurveillanceやoutbreak対応の最低限の能力のこと。つまり、このことは国の公衆衛生危機管理体制そのものを強化することを指す。

”感染症を含む異常事態全体”としたのは、IHR2005では、化学物質などを含めた包括的なGlobal Health Riskとして“Public Health Emergency of International Concern(PHEIC)”という概念で捉えられるようになったためだ。
参照:Effects of New Internatonal Health Regulations (medscape)
(PHEICの決定アルゴリズムは右の図のとおり。)

このアルゴリズムを見ると、昨今日本で流行している麻疹は、PHEICに該当するのではないか、と思えてくるが・・・。日本では、まだまだワクチンに対 する公衆衛生的な重要性の認識が低い。今回の騒動を通して、公衆衛生は過去の話ではないということを再認識できればいいのだが、マスコミは煽り立てることばかりに躍起になって、問題の本質を見ようとしていない。それどころか、国際保健規則の改正について報道しているマスコミは現在のところ日経新聞のみだ。しかも記事が短い・・・。世界とのギャッ プに驚かざるを得ない状況だ。

しかし、問題は多いとはいえ、日本など、自力で危機管理体制を強化できる国はまだいい。自力強化など到底できない国は多い。こうした国々のCapacity Buildingをどのように国際社会がサポートしていくかが今後の課題となるだろう。

今回のIHR(2005)の発効によって、世界はGlobal Health Crisisに対する協調体制へ大きく舵を切った。世界の国々の思惑、利害が交錯する中、こうした強力なシステムを創り上げていく作業は相当大変なものだっただろう。

しかし、これからがもっと大変だ。システムを軌道に乗せなければならない。しかも、迅速に。
目の前には、H5N1という大きな脅威が待ち構えているのだから。

2 comments:

Anonymous said...

well.. it's like I said!

Anonymous said...

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lolikneri havaqatsu