Wednesday, October 17, 2007

Women Deliver

夏を挟んでずいぶんと中断していたBlogを再開。

この間にも世界はすごい勢いで動いてきた。

何より大きな動きがあったのは、母子保健(Maternal, Neonatal and Child Health: MNCH)をめぐる動きである。

今年は"Safe Motherhood Initiative"が始まって20年という節目の年であると同時に、昨年のMDGs中間(1/3)評価で達成が極めて難しいと危惧されたMDG-5に対し、国際社会が重点的な取り組みを開始するべき年でもある。

9月26日には、NorwayのStoutenburg首相がMGD-4,5、特にMGD-5に焦点を当てたグローバルキャンペーン"DELIVER NOW FOR WOMEN + CHILDREN"を発表、10億ドルの拠出を表明した。
また、10月4日には、Clinton Global Initiative(CGI)の年次会合が開かれ、同じくMNCH分野へ12.5億ドルの拠出が発表された。

いま、MNCHの分野に、とにかく大きなお金が動いている。

そして、こうした動きに対する1つのまとめとなるのが、明日(10月18日)からロンドンではじまる国際会議"WOMEN DELIVER"である。これまで母子保健の分野で活躍してきた国際機関、NGO、GO、そして研究者らが一同に会し、これからのMNCHのあり方を議論するという重要な会議である。


更に10月29日~11月2日には北京でGlobal Forum for Health Researchが開かれ、Maternal mortality研究をめぐる問題についても話し合われる。


WOMEN DELIVERに合わせ、学術面からの報告も相次いでいる。

10月12日には、WHO/UNICEF/UNFPA/World Bankより2005年のMMRに関するモニタリング報告書"Maternal Mortality in 2005"が、発表された。
MDG-5達成のためには、1990年から2015年まで年平均5.5%のMMR低下が必要であるとされているなか、2005年のMMR低下は世界平均で1%以下、サブサハラアフリカでは0.1%でしかなかったことが明らかとなった。

また今週(Oct. 13-19)のTHE LANCETでは、WOMEN DELIVER開催に合わせ、紙面のほぼすべてを使って妊産婦の健康に関する特集を組んだ。(THE LANCET 2007; 370, 1283-1392)


まだ読み始めたばかりなのでコメントは避けるが、これまでのMaternal Mortalityの現状を総括し、今後"Women Deliver"へと発展するMNCHのあり方について極めて重要な視点が得られそうだ。

p.s.
このBlogスタートのきっかけともなったL. Garrettの"The Challenge of Global Health"。この中で著者はHIV/AIDSを筆頭とするVerticalなGlobal Health Programsへ資金が大きく流れたことで、逆に地域の公衆衛生を担う現場の人手が不足しているという現状を指摘し、地域の公衆衛生の改善というHorizontalな介入の重要性を説いた。あれからもうすぐ1年。Global Healthを取り巻く環境は大きく変わりつつあるように思う。
国連やGOはもとより、Gates FoundationやClinton Initiativeの巨額の基金が、今度は母子保健の分野へと流れ始めた。
また、Brown政権のイギリスは、こうした流れと平行してInternational Health Partnership(IHP)という保健システム強化を主眼とするイニシアティブを先導しはじめている。

地域保健のempowermentの鍵であるMNCHが大きくテコ入れされ、同時に保健システムというgovernanceの改善に注目が集まることで、L. Garettの指摘する空洞化は改善されていくのかもしれない。

こんな世界の流れの中で、日本はどのような形で貢献できるのか。
この流れというのは、実は日本がこれまで得意としてきた分野そのものなのではないかと思う。日本で発展した母子健康手帳(MCH Handbook)は、まさにMNCH、Continuum of careの概念に通ずるものであるし、地域保健のシステム強化も、かつて途上国であったこの国が今日まで経験してきたことそのものであるように思える。

いまだGlobal Healthの潮流の主導権は欧米にあるが、そうした意味では日本はこの流れにおいて重要な役割が果たせる可能性がある。来年のTICAD IVやG8サミットをはじめ、来年は日本がGlobal Healthに関わるConferenceを主催する機会も多い。こうした意思決定の場を通し、ぜひ日本も役割を担っていってほしい。

drasticに動き続けるGlobal Healthに今後も眼が離せない。

0 comments: