Thursday, January 24, 2008

State of the World Children 2008: Child Survival

前回の投稿からしばらく経ってしまった。知らぬ間に時は2008年。
京都議定書の約束期間が始まった環境元年にして、PHC(Primary Health Care)の概念が成立したAlma-Ata 宣言から30年目の節目の年。日本にとっては、環境やGlobal Healthのテーマで大きな会議を2件もホストする重要な年だ。そして私個人にとっても、次のステップへの最後の年となる。

去年はなにやら大きすぎるテーマばかりを扱ってしまい、議論が浮世離れした感も否めないので、今年はもっと身近なテーマも含めてBlogを書いてみたいと思う。(それだけGlobalレベルでの動きが大きかった1年とも言えるのだが。)

と、書きつつも、2008年最初のテーマは、またでかい話だ。
今週、UNICEFが今年の世界子ども白書「State of the World Children 2008: Child Survival」を発表した。

今回のテーマは、直球ど真ん中。”Child Survival”である。
2007年の世界子ども白書のテーマは、2007年のGlobal Healthの流れそのものといっても過言ではない「子どもと女性」。女性のエンパワメントが子どもの健康に及ぼす影響を分析した。

全部読むのは大変だが、ざっと概観するには、こちらのThemes and Profiles、およびCharts and Graphsが分かりやすい。

統計そのものの価値(2007年の世界の子どもの死亡ははじめて1000万人を割り込んだ)もさることながら、UNICEFの政策の転換が鮮明になっているところが興味深い。

今回の白書の重要なポイントは、

・ 包括的プライマリ・ヘルス・ケアへの回帰
 > Health System Development (Governance)
 > Community-based Approach (Empowerment)
 > Continuum of care

政治的コミットメントグローバルパートナーシップの重要性

といった点だろう。

最も大きな変化なのは、過去、GOBI-FFやEPI、IMCI、ACSD(略語だらけだ・・・)など、Vertical programを得意としてきたUNICEFが、Horizontal Approach、まさに30年前のAlma-Ata宣言(包括的PHC)の理念に回帰したという点であるように思える。上からのGood Governanceと下からの村人のEmpowermentを組み合わせるという使い古された理想論を、90年代、2000年代にUNICEFをはじめとした国際機関、GOなどが強力に推し進めてきたVertical Programを整理し束ねることで実現していこうということが趣旨。

また、2007年からの流れを汲んで2008年は、母性(Maternal)から新生児(Neonatal)そして小児(Child)に至るまでのケアの継続性(continuum of care)を重視した内容になっている。これは昨年のWoman Deliver Conferenceで散々主張されたことで、再び説明する必要は無いだろう。

なんか、こうしたUNICEFの変化を見ていると、日本(JICA)はずいぶん先を走っていたのだなぁ、と気づく。(別にJICAの回し者ではないが・・・)
保健システム強化は以前からJICAの保健分野の最重点取り組み課題であるし、Continuum of Careの理念そのものである母子保健手帳(MCH Handbook)の普及活動には既に10年の実績がある(最初のインドネシアでの母子保健手帳プロジェクトは1998年から)。日本は自国の経験からUNICEFが気付くはるか前からこうしたアプローチの重要性に気付いていたのだ。(こうしたアプローチの重要性が実証的に確認されたのは最近なのだが。)

別に私は日本を褒め称えたいわけではない。ただ残念なのは、こうした良い先例が世界(特に欧米諸国)にはあまり広く知られていない点だ。あまり、というより、全然、かもしれない。これにはさまざまな理由が考えられるが、やはり最大の理由は日本のGlobl Healthの土壌が欧米に比べると発展途上であり、基盤整備が遅れていることに他ならないのではないか。特に実践科学としてのGlobal Health(研究、実践、政策の循環)、そしてそうした活動を支える一般社会のGlobal Healthに対する理解という点においては、大きく立ち遅れているように思われる。

この状況を変えるチャンスは、今だと思う。

理由は2つある。1つはこれまで述べてきたとおり、欧米の潮流が日本の考え方に接近したことである。そしてもう1つ、今年このいいタイミングに、日本は今回の白書でも述べられている「政治的コミットメント」を引き出し、「グローバル・パートナーシップ」の構築においてリーダーシップをとるチャンスに2度もめぐまれるためだ。

是非この機会を端緒に国内でもGlobal Healthの基盤整備を進め、社会の(単なる同情ではない)理解が深まっていってほしい。

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