Monday, April 23, 2007

Tadataka Yamada: Keynote Speech @ The 4th Annual World Health Care Congress

一昨日、昨日とWashington, D.C.で開催された世界ヘルスケア会議。
山田忠孝氏によるオープニング基調講演が開かれ、今日オンラインで視聴できるようになりました。

Tadataka Yamada: Opening Keynote Address @ The 4th Annual World Health Care Congress(.mov file)

山田忠孝氏はBill & Melinda Gates Foundation(ゲイツ財団)の主要部門、Global Health ProgramのExecutive Directorであり、今後のGlobal Healthの行方をにぎるkey personの一人。

先のForeign Affaris(jan/feb, 2007)におけるL. Garrett氏による批判に答える形で、ゲイツ財団の今後の方針が明らかにされました。

L. Garrett氏の論文では、三大感染症、特にHIV/AIDSに過剰な関心と資本投下が行われることで、他の重要な地域保健システムを維持することが困難になっているという現状を分析し、このままでは地域保健システムが崩壊し、途上国における保健状況は悪化しかねないと警鐘を鳴らしました。

例えば、集中的な資本投下が行われたセクター(例えばAIDS治療)に賃金インセンティブが働き、これまで地域保健を担ってきたヘルススタッフがそちらに流れてしまうという現象が起こり、より基礎的なインフラとしての地域保健・公衆衛生に従事するスタッフが不足に陥ってしまっている状況が明らかになりました。
そして同時に、Recipient Sideが多額すぎる資金をマネジメントすることができず、資金があふれ出し、すでに汚職や腐敗が進行しているという分析もなされました。

この論文の発表は、これまでのGlobal Healthの関係者の枠を超えて関心を集めており、非常に大きな論議を醸し出しています。(これまでもLancetのChild Survival Seriesなどでも同様の問題点は指摘されてきたものの、関係者の間で問題意識が共有されているにすぎませんでした。米国外交の行方を占うForeign Affairsに掲載されたことで問題の大きさが改めて浮き彫りになったといったほうが良いのかもしれません。)

今回のSpeechは、こうした批判に答え、今後のゲイツ財団の方向を位置づけたともいえます。
山田氏は、現在のGlobal Healthをめぐる最重要課題を「不公平性 Inequity」と位置づけ、その解決を妨げる要因として人材の不足・偏在・流出を大きな問題としました。
偏った点の介入(AIDS対策、など)だけでなく、より公衆衛生的・地域保健的な面の介入へのFundingを強化する必要性、そして、汚職防止のためのFundの流れのモニタリング・評価を強化する責任も明確にしています。
同時に、安価で効果的な医薬品(ワクチンなど)の基礎研究を推進する投資も重要であることを繰り返しています。(ちなみに、山田氏は現職就任まで巨大製薬企業gskの研究開発部門のDirectorでした。)

これまでのHIV/AIDSへの集中投下から、より公平に世界の公衆衛生改善に寄与しうる投資へ、そして財務のmanagement強化とaccountability向上に向けてゲイツ財団は舵を切ることになりそうな予感です。

そして、来る7月16-18日、今度はPublic Health CongressがD.C.で開催されます(上述会議と同じWorld Congressが主催)。
そして・・・この会議での基調講演は、なんと、Laurie Garrett!!
まさに狙ったような人選ですね。本当に面白そうで目が離せません。

あぁ会議でてみたいなぁ・・・でも学生でも4万円近くするみたいだなぁ・・・無理無理(苦笑

p.s.
ちなみにLaurie Garrett氏は、"Big Ps"といわれる3大ジャーナリズム賞、つまりPeabody賞、Polk賞、Pulitzer賞をすべて受賞しているただ一人のジャーナリスト。特にGlobal Health分野を専門とする。
現在は外交評議会Council on Foreign RelationsのSenior Fellow for Global Healthという立場。
外交評議会はアメリカ外交政策の奥の院と言われ、この評議会の機関雑誌Foreign Affairsは、その後のアメリカ外交政策に深く関わっている。たとえば、Samuel P. Huntingtonの歴史的論文、「文明の衝突 Clash of Civilizations」は1993年にこのForeign Affairsに掲載されたもの。

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