Friday, November 16, 2007

Health at a Glance 2007

OECD加盟国の保健医療は改善しているが、慢性疾患の管理の改善が必要
-必要な眼底検査を受けている糖尿病患者は半数のみ-

13日、OECD諸国の健康指標に関するデータ集「Health at a Glance 2007(図表で見る世界の保健医療2007)」が発表された。

さまざまな保健関連指標をグラフや表でクリアカットに見せてくれ、非常に分かりやすい。
Web版は無料でこちらから利用できる。

日本はというと・・・
0歳児平均余命世界一は堅持。やはり女性が貢献。
65歳平均余命は男女とも世界一(23.2、18.1)。
虚血性疾患で入院後30日以内に死亡する割合も3%と世界最低。
乳児死亡率も世界最低水準(2位)。未熟児の死亡も世界最低。
医療機器の普及率(CT, MRI)は2位のアメリカに倍以上の差をつけてトップ。(ただし放射線治療の施設の普及率は高いとはいえない。)
肥満率(BMI>30の割合)も世界最低。肥満増加率もダントツで最低。
   (なんとOECD平均は14.6%!!最悪のアメリカにいたっては32.2%!!!!!!!デブばっかり・・・。)
アルコール摂取量はOECD中6番目に低い。
平均在院日数は、OECD平均の2倍以上でダントツ長い。
医師にかかる割合もOECD平均の2倍以上(年間13.8回)で第1位。
一人当たりの医療費は、OECD平均以下の低水準。
国民総医療費がGDPに占める割合も平均以下。
一人当たりの医療費増加率もOECD諸国中4番目に低い。
医療費の内訳は、日本は治療・リハビリの占める割合が最も高く、公衆衛生の占める割合が低い。
腎疾患治療率は、腎移植は最低水準だが透析を含めると最高。
(糖尿病によって腎不全患者は現在急増中。腎透析は非常に高額な治療だが、高額医療費として国庫から大部分が賄われている。お陰で日本の腎透析にかかる医療費は1兆3千億円近い。ちなみに日本の公立学校の人件費の総額は1兆8千億円程度。)

一方で、
収入格差(Gini係数)は、OECD平均を超え、ジリジリと増加中。
人口あたりの医師数は0.2%とOECDで4番目に低い(OECD平均0.3%)。
看護師数は、0.9%とOECD平均(0.89%)とほぼ同じで増加率(2.5%)は3番目に高い。)
喫煙率(29.2%)は、OECD(mean 24.3)で5番目に高い。
低出生体重児(<2500g)出生率は、なんとOECD中2番目に多い。(原因として若年女性の喫煙率と高齢出産の増加が指摘されている。)
自殺率(10万人中19人)は、OECD(mean 12)中3番目に高い。

そして・・・
公的医療費のうち、公衆衛生・予防医学に使われる割合はというと・・・実は7番目に低い。なんとOECD平均の約半分(3.1 vs 1.6 [%])。

日本は、保健医療福祉のなかでもかなり「医療」に偏った社会であることがみてとれる。
それなのに医師の数は最低レベル・・・。でも医療機器はダントツで整っている。
なんとも矛盾した構造だ。

医療費削減と言われて久しい今日この頃。
世界水準から見れば、医療費はむしろ安い部類に入り、医療費増加率も低い日本。
更に世界中の国々が医療費を増やす方向に転じているというのに、唯一時代と逆行する日本。
数字を見れば、アメリカの医療がいかにボロボロか分かるのに、医療制度までアメリカ崇拝をやめない日本。
そしてその尊敬してやまないアメリカが本気で皆保険制度を検討し、選挙の最大の焦点となっている中、逆に自由化論議が巻き起こる日本。
10年前の世界を基準に議論が進んでいるようにしか思えない。

国民も「混合診療を全面解禁しろ」とマスコミに踊らされる前に、全面解禁したらどういった状況が生まれるのか、過去の世界の歴史を踏まえてよく考えるべきだろう。今度ばかりは厚労省も頑張ってほしい。

一方で、先日の混合診療違法判決は妥当なものだったと思う。
裁判官は、社会のニーズに合わせた法の解釈(つまり法社会学的な判断)をしたわけではなく、あくまで厳密な法解釈(概念法学)に基づいて結論を下している。裁判官が指摘したのは「現状の法律においては」混合診療を認めない理由が無い、ということ。決して混合診療解禁を助長するものでも否定するものでもないのだろうと思う。
しかし、残念なことに社会の一般的な受け取り方は異なっている。判決の具体的な検討も無く、その事実のみをもって違法判決が「混合診療解禁に一歩近づいた」と考える向きが多い。
混合診療を全面解禁するのか、それとも一部解禁するのか、全面禁止を継続するのか。
これまで混合診療が禁止されてきた理由、そして解禁した諸外国における結果などを踏まえて、もっと深い議論が起こってほしい。

p.s.
ちなみに、お国柄が出て面白いのは、「よい健康状態」と報告した人の割合(主観的な健康度)。
日本は下から2番目、そして、アメリカは何と!!上から2番目!!!!!!
日本人の心配症はさておき、アメリカは3人に一人がメタボっている世界の(肥満)超大国。
なのに、健康状態は世界で2番目にいい・・・?
能天気というべきか、何と言うべきか・・・。

0 comments: