Friday, November 23, 2007

Global Health on G8 Summit 2008

洞爺湖サミットで日本政府 「国際保健」主要議題に (MSN Sankei)
保健分野で国際協力を 母子手帳普及など指針策定呼び掛けへ(北海道新聞)

政府は11/22、来年の洞爺湖サミットで「Global Health」を主要課題として取り上げると発表した。
25日に開かれる国際シンポジウム「“PEOPLE AT THE CENTRE”:21世紀の医療と医療システムを求めて」において高村外相から政策提言として発表される。

今回の発表でのポイントは3点。

「人間の安全保障」の概念に立脚
「母子保健」「保健医療人材育成」を柱とした行動指針(特に母子手帳・保健師育成)
・ UN/GO/NGO/Private Sectorなどの「全員参加型」アプローチの枠組の提唱

日本がGobal Healthに関するInitiativeを発表するのは、1994年の人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)、1997年のBirmingham Smmitにおける国際寄生虫イニシアティブ(橋本イニシアティブ)、2000年の九州沖縄サミットにおける沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)以来4度目となる。

今回、日本が取り組む重点課題は、Woman Deliverで宣言したとおり、母子保健(Maternal, Newborn and Child Health)の分野。母子保健がSummitの主要課題になるのは実は初だ。母子保健分野は、まさに日本の戦後の公衆衛生において目覚しい成果を挙げた分野で、母子健康手帳や保健師の活動はその改善に大きく貢献した。これまでJICAなどを通し、日本は世界的にも母子手帳の普及を推進してきた。母子保健を政策の中心におくことは、MDGsで立ち遅れたMDG-4/5をテコ入れすることにつながると同時に、保健医療システムそのものの強化にもつながる。

一方、人間の安全保障(Human Security)は、1994年のUNDP Human Development Reportで初めて提唱され、現JICA理事長の緒方貞子氏がAmartya Sen氏とともに共同議長を務めた同名委員会で概念的に整備された考え方。これからの国際社会の安全保障のあり方として、国家安全保障(National Security)に加え、よりミクロ的な個々の人間の生存・生活の安全を保障しようというもの。日本やカナダなどの外交政策において主軸の1つと位置づけられている。

なお、25日のシンポのテーマは、「『人』中心の医療」="People-centred Healthcare"。
近年WHO/WPROが推進するPeople at the Centre of care Initiative (PCI)の中で提唱される考え方だ。混同しそうだが、いわゆる患者中心医療(Patient-centered Medicine)とは異なる。医療者や患者中心の医療でもなく、「人々」中心の「ヘルスケア」という考え方だ。
シンポジウムを日本語化する際に"Healthcare"を"医療"と訳さざるを得なかったのが惜しい。ヘルスケアという概念の中には、医療に加え、保健や福祉の概念も包含される。例えば、People-centred Healthcareには、健康リテラシを向上させる分かりやすい健康情報や健康教育へのアクセス、保健アクセスのdecision-makingのサポート、といった観点も含まれているからだ。

こうしたEmpowerment、Participation、Community/Family-centredといった考え方は、まさに包括的PHC(Alma-Ata宣言)への回帰であり、「人間の安全保障」の具体的処方箋ともいえると思う。
この会議を日本で開催することは、日本にとっては「人間の安全保障」へのcommitmentを内外へアピールするよい機会なのだろうと思う。

そして、その中で発表される新しいGlobal Health Initiative。よく考えてみるととてもうまくできている。

しかし、よく分からないのが、ノルウェー・英仏独加、Clinton Global Initiativeなどが推進するDeliver Nowキャンペーンとの関係性だ。Deliver Nowを統括するWHO|The Partnership for MNCH(PMNCH)の コーディネーションの元で日本のイニシアティブも推進されていくのか、それとも独自路線を歩むのか。「国連や各国政府やNGO、民間などの全員参加型の枠組 みの提唱」というが、母子保健分野には、そうした枠組がすでにある。25日のシンポでこのあたりの詳しい話が聞ければいいと思う。

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